エリアガイド · ハノイ
🇻🇳 ハノイ
ハノイの食は、澄んだ出汁と米、酸と香草の上に立っている。旧市街三十六通りの朝食、ドンスアン市場の庶民の胃袋、西湖畔のゆるやかな水辺の食。三つのエリアは、同じ都市の食を異なる速度で見せる。魚醤と香草を軸に、朝の一杯から夜のビアホイまでを歩く旅だ。
ハノイの食
ハノイの食を貫くのは、澄んだ出汁と米、そして酸と香草の対比だ。ベトナム北部の古都であるこの街は、南部の甘く濃い味付けとは対照的に、素材の輪郭を静かに立てる作りを守ってきた。フォーの澄んだスープ、ブンチャーの甘酸っぱいつけ汁、バインクオンの薄い米の皮。どれも一つの強い味で押すのではなく、魚醤の塩気を土台に、ライムの酸、唐辛子の辛、山盛りの香草を客が自分で組み立てる。辛さは控えめで、辣を足すのは食べ手の側だ。米は麺(フォー、ブン)と、蒸した皮や餅米に姿を変え、汁物と揚げ物、巻き物のあいだを行き来する。四季のある気候も影響し、冬は温かい汁物、夏は冷たいつけ麺や香草が前に出る。飾らず、出汁と香草のあいだで味を組み立てるのが、この街の食の芯にある。
三つのエリアから始める
この街の食は、速度の異なる三つのエリアから入るとわかりやすい。旧市街三十六通りは、かつて職人が同業ごとに集まった路地の集まりで、バッダンのフォー、ハンマインのブンチャー、チャーカーの炙り魚、路地奥のエッグコーヒーと、朝から夜まで名物が連なる。ドンスアン市場周辺は、ハノイ最大の市場を中心にした庶民の朝食の場で、蟹のブンリエウ、田螺のブンオック、緑豆のソイセオが、働く人の胃を満たす。西湖・チュックバックは水辺のゆるやかな一帯で、揚げ物のバイントム、巻いて食べるフォークオン、夜の田螺蒸しが、湖の風のなかで供される。密集した路地、市場の喧騒、開けた水辺。三つを歩けば、ハノイの食の幅がひととおり見えてくる。
ハノイの食の読み方
ハノイの一皿を読むには、出汁・酸・香草の三点を見るとよい。出汁は牛骨や鶏、蟹や田螺から引かれ、澄んでいるか、酸で立てているかで料理の性格が分かれる。フォーやフォーガーは澄んだ塩気、ブンリエウやブンオックは発酵酢とトマトの酸が主役だ。酸は、ライムのように後から足すものと、発酵酢のように最初から汁に溶けているものがある。そして香草。ハノイの食卓には必ず山盛りの生の香草が添えられ、ミント、コリアンダー、ディル、青じそに似た葉などを、客が好みで沈める。これが温かい汁と冷たい香草の対比を生み、味を軽くする。魚醤(ヌクマム)は塩の役、シュリンプペーストは発酵の深みを担う。一皿を食べたら、次はその出汁と酸と香草がどう組み替えられているかを探すと、街全体の食が一本の線でつながって見えてくる。
訪れる前に
支払いは屋台や市場では現金が基本で、少額紙幣を多めに用意しておくと安心だ。近年はコード決済も広がるが、露店では使えない所も多い。ドンの桁は大きく、一万・五万・十万の紙幣を混同しやすいので、受け取りとおつりは落ち着いて確かめたい。食事の時間帯は明確で、フォーやソイなどの朝食は午前で終い、ブンチャーは昼、ビアホイや田螺蒸しは夕方から夜が本領だ。辛さは総じて控えめで、卓上の唐辛子や魚醤で自分好みに寄せる。香草が苦手なら残してよく、発酵調味(マムトム)は少量から試すとよい。生野菜や氷は店により衛生状態が異なるので、人の集まる店を選ぶと安心だ。本文中の価格や営業時間はあくまで目安で、実食未確認の情報を含む。旬や仕入れで内容は変わるので、最後は現地で確かめてほしい。交通量の多い街なので、道路を渡るときと貴重品には気を配りながら、出汁と香草の街をゆっくり歩き抜けてほしい。
このエリアのルート
旧市街36通りルート
ホアンキエム → バッダン → ハンマイン → タヒエン(歩く順) · 徒歩 110分 · ルート紹介を読む →
ドンスアン市場ルート
ドンスアン市場 → ハンチウ → ハンボー → ロンビエン(歩く順) · 徒歩 95分 · ルート紹介を読む →
西湖・チュックバックルート
トゥニエン → チャンクオック寺 → グーサー → 西湖畔(歩く順) · 徒歩 120分 · ルート紹介を読む →