ハノイ · 旧市街36通りルート
旧市街36通りルート
ホアンキエム湖の北に、かつて職人の同業ごとに区切られた三十六の通りが今も残る。バッダンのフォー、ハンマインのブンチャー、チャーカー通りの炙り魚、路地の奥のエッグコーヒー。朝の一杯から夜のビアホイまで、狭い通りに一日の食が連なる。歩いて確かめる、ハノイの芯だ。
三十六通りの食
旧市街は、かつて絹、銀、紙、薬草など、職人が同業ごとに集まって通りをなした一帯だ。通り名の「ハン(hàng)」は「商う品」を意味し、今も面影を残す。その狭い路地に、ハノイの食が凝縮している。牛骨を炊いたフォー、炭火のブンチャー、蒸したての米麺バインクオン、卓上で仕上げるチャーカー。米と澄んだ出汁、魚醤の塩気、そして山盛りの香草が、どの一皿にも通底する。派手な辛さより、素材そのものの輪郭を静かに立てるのがこの街の作りだ。看板より、湯気と炭の匂い、路上に並ぶ低い椅子が、店の在り処を教えてくれる。まずは湖畔から一本、通りに入ってみたい。
出汁と香草のあいだ
ハノイの味を読む鍵は、澄んだ出汁と、それに添える香草の対比にある。フォーのスープは牛骨や鶏を長く炊いて澄ませ、脂を丁寧にすくう。そこへライムの酸、唐辛子の辛、香草の清涼を、客が自分の手で少しずつ足していく。ブンチャーの甘酸っぱいつけ汁、チャーカーのディル、エッグコーヒーの卵黄クリーム。どれも一つの強い味で押すのではなく、複数の要素を口の中で組み立てさせる。だから同じ一杯でも、加える香草や調味で輪郭が変わる。まず基本の味を確かめ、それから自分の好みへ寄せていく。辛さは控えめな店が多く、辣を足すのは客の側だ。飲み物を手元に置き、酸・辛・香のあいだを行き来しながら歩きたい。
このルートの歩き方
ホアンキエム湖の北西、バッダン通りのフォーで一日を始めたい。行列に並び、券を買い、澄んだ牛のスープで胃を温める。通りを北へ進み、ハンマインでブンチャーを昼に据える。少し歩いてバインクオンを軽く挟み、蒸したての薄い皮で口を整える。午後はチャーカー通りに折れ、卓上の鉄鍋で魚を仕上げる一皿を数人で分けたい。夕方が近づいたら、グエンフーフアンの路地でエッグコーヒーを一杯、階段を上がって湖の喧騒を窓の下に置く。締めはタヒエンの角、低い椅子に腰かけてビアホイを一杯。全体で2時間半ほどだが、朝と昼と夜で店の開く時間が違うので、順に合わせて歩くとよい。混雑する週末は少し早めに動くと落ち着く。
ルートマップ
ホアンキエム → バッダン → ハンマイン → タヒエン(歩く順) · 番号は下の一皿と対応
このルートの一皿(6)
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